トップページ >> エネルギーが使(つか)われているシーン >> 原子力発電(げんしりょくはつでん)
1950年代に、新たな発電方法として原子力発電ができました。原子力発電の仕組み(しくみ)は、火力発電同様(どうよう)、水蒸気(すいじょうき)によりタービン(羽根車(はねぐるま))を回して、その力で電力を得(え)ています。火力発電との違い(ちがい)は、一次エネルギーに化石燃料を使用せず、ウランと呼ばれる物(ぶっしつ)質を使用しているところです。
ウランとは、ウラン鉱石(こうせき)から得られる金属(きんぞく)のようなものです。原子力発電は、ウランの原子が核分裂(かくぶんれつ)を起(お)こすときに得られる熱エネルギーを利用して水を水蒸気にしています。日本ではウランがとれないため、カナダやオーストラリアなどからウランを仕入(しい)れています(輸入(ゆにゅう))。
現在、実用化(じつようか)されている、軽水炉(けいすいろ)と呼ばれるタイプの原子炉(げんしろ)では、数多く(かずおおく)あるウランの種類(しゅるい)の中でも、核分裂のしやすいタイプのウランが使われています。このウランを無駄(むだ)なく核分裂させるためには、「濃縮(のうしゅく)」過程(かてい)を得る必要があります。「濃縮」とは、ウランの濃度(のうど)を高めることです。濃縮する前は0.7%ですが、濃縮後には約6倍の4.0%の濃度まで高めることができます。
原子炉では、濃縮行程(こうてい)を施(ほどこ)したウランを「ペレット」と呼ばれる小指の先ほどの大きさの粒(つぶ)に焼き固められ、それを収集(しゅうしゅう)し燃料(ねんりょう)として使用します。この小指の先ほどのペレットでつくることのできる電気は、火力発電に換算(かんさん)すると、石油(化石燃料)の500リットル分にも相当(そうとう)します。原子力発電がいかに効率(こうりつ)の良い方法であるかをうかがい知ることができますね。
原子力発電は、火力発電と比(くら)べて、窒素酸化物(ちっそさんかぶつ)などの有がい物質や二酸化炭素(にさんかたんそ)の排出(はいしゅつ)が少ないという利点(りてん)があります。ですので、地球温暖化防止対策(ちきゅうおんだんかぼうしたいさく)として有力候補(ゆうりょくこうほ)なのですが、原子力発電にはひとつ大変大きな問題があります。それは、発電し終わった後にでる廃棄物(はいきぶつ)なのですが、これに高レベルの放射能(ほうしゃのう)を含(ふく)んでいるため、これの処理方法(しょりほうほう)をどうするかという大きな問題を抱(かか)えています。
ご存じの通り、放射能(ほうしゃのう)は人体のみならず生物や植物など自然界に多大な被がいを与(あた)えます。多量(たりょう)の放射線(ほうしゃせん)にあたってしまうと、白血(はっけつ)病などを引き起こすことになります。しかも、この放射性廃棄物(ほうしゃせいはいきぶつ)が安全に取り扱うことができるまでに必要な期間が短くても数百年から数万年かかるといわれています。そのため、地上においておくのは大変危険であるため、どこかの地中深くに埋めなくてはいけません。
しかし、火力発電に必要な化石燃料や原子力発電に必要なウランなどのような限(かぎ)られた資源を利用しない水力発電は将来(しょうらい)に発電ができなくなるという心配(しんぱい)もなく、また、二酸化炭素を排出するなどの有がい物質の問題もありません。さらに、水力発電は一度つくってしまうと、火力発電や原子力発電と比(くら)べ、長く使うことができます。
また、原子力発電所が万が一、じこを起こして放射能が漏(も)れてしまったとき、周囲に多大(ただい)な被がいを与えてしまいます。記憶(きおく)に新しい昭和61年の旧ソ連のチェルノブイリ原子力発電所のじこは、周辺地区のみでとどまらず、近隣(きんりん)の国々(くにぐに)にまで被がいを与えました。
プルトニウム-高速増殖炉(こうそくぞうしょくろ)
原子力発電では、使用した燃料をもう一度利用できるよう、再処理(さいしょり)を施(ほどこ)してプルトニウムという物質を取り出し、プルトニウムを燃料にして発電を行う方法もできます。また、高速増殖炉(こうそくぞうしょくろ)と呼ばれる原子炉(げんしろ)を利用することで、最初に燃料として利用したプルトニウムよりも多い量のプルトニウムを取り出すことができるのです。ただ、1995年の「もんじゅ」と呼ばれる高速増殖炉が、じこを起こし、運転(うんてん)を停止(ていし)しました。また、建設(けんせつ)にかかる費用(ひよう)が高価(こうか)であること、プルトニウムの回収時(かいしゅうじ)の問題や安全性の指摘(してき)など、解決しなくてはいけないことが多くあるため、日本だけではなく、世界中で建設が中止となっています。
世界からみた発電方法別の内訳(うちわけ)
現在、世界のすべての発電量に対してどれくらいの割合(わりあい)で、それぞれの発電方法が利用されているのかと言いますと、火力発電が約6割、原子力発電が約2割、水力発電が約2割となっています。カナダは水資源が豊富(ほうふ)であるため約6割が水力発電で電力を供給(きょうきゅう)を行っていたり、石油の輸入を制限(せいげん)しているフランスでは約8割が原子力発電を利用していたりなど、国によって利用されている発電方法の割合が違ってきます。