トップページ >> エネルギーの問題解決(かいけつ) >> 新(しん)エネルギー「分散(ぶんさん)タイプ」
ぼくたちが使っている電気は、大きな発電所(はつでんしょ)で大量(たいりょう)につくられて、各地域(かくちいき)の家庭や工場に送電(そうでん)されています。このような発電システムは、たくさんの電気を一度でつくることができるため、発電にかかるお金を安くすませることができますし、多くの家庭にとぎれることなく安定(あんてい)した電気供給(きょうきゅう)が可能(かのう)となっています。
しかし、大きな発電所は、だいたい送電(そうでん)する家庭から離(はな)れた地域に建設(けんせつ)されるため、送電(そうでん)にかかるエネルギーが無駄(むだ)に大きくなってしまいます。また、発電したときに出る熱の利用(ほかのことに有効活用する手段)が困難(こんなん)であるという問題もあります。
そこで、一つの場所でたくさんの電気を生産(さいせん)して送電するのではなく、電気の必要な各場所に、必要とされる分だけの電力を生産し利用するという技術があります。発電する場所がたくさんの場所に分散することから、「分散型のエネルギー技術」と呼ばれています。
分散型エネルギー技術が使われている種類(しゅるい)の一つに、将来的に期待されているのが「燃料電池」です。燃料電池とは、1960年代にジェミニ5号と呼ばれる宇宙船(うちゅうせんよう)用へ向けて最初(さいしょ)に実用化(じつようか)されたものです。燃料電池は、水素(すいそ)を空気に含(ふく)まれている酸素(さんそ)と化学反応(かがくはんのう)を起(お)こすことで、電気を生み出すというからくりです。水素と酸素(さんそ)のみが原料(げんりょう)ですので、発電時に排出(はいしゅつ)されるものは水だけであり、ほかの有がい物質(ぶっしつ)はまったく排出されません。地球環境(かんきょう)に大変優(やさ)しいのです。
燃料電池には、発電したときに高い温度の熱を発生するタイプもありますので、その熱を上手に利用すると、元の燃料が持つエネルギーの約8割(わり)を活用(かつよう)できます。
燃料電池は、車の動力(どうりょく)を発生(はっせい)する装置(そうち)として開発(かいはつ)が進められているほか、建築物(けんちくぶつ)への設置(せっち)の開発も行われています。家庭に送られる都市(とし)ガスから水素を拝借(はいしゃく)し、燃料電池を利用して小さな規模(きご)で発電を行いつつ、そのときに出た熱を暖房(だんぼう)として利用したり、給湯(きゅうとう)として活用したりなどしていこうという小型(こがた)コージェネレーションシステムです。
風力・太陽光などといった自然のエネルギーを使った発電も大きな規模で発電を行わない分散型エネルギー技術といえます。これらのような自然エネルギーによる発電は、環境に悪影響(あくえいきょう)を与えないクリーン・エネルギーの利用を行っていますが、自然状態(じょうたい)により発電できるときと、できないときがありますので、電力供給(きょうきゅう)を一定に保(たも)つことが難(むずか)しいことが一つの問題となっています。また、風力・太陽光発電共(とも)に、火力発電で得られる電力と同じ電力を求めようとすると、大きな規模の設備が必要になります。そこで、太陽電池で生産したエネルギーを、蓄電池(ちくでんち)に一度保存(ほぞん)して利用する方法や、太陽光発電や風力発電と、蓄電池を一緒(いっしょ)に利用することで電力供給に安定感(あんていかん)を与えることができます。
これらの方法を用いれば、地球環境への負担(ふたん)を軽減(けいげん)させることができます。しかし、設備投資(せつびとうし)にかかる費用(ひよう)や発電にかかる費用を考えますと、従来の方法と比較(ひかく)し高価(こうか)となるため、なかなか普及(ふきゅう)していないのが現状(げんじょう)です。
世界で必要なエネルギーの量(りょう)がまだまだ莫大(ばくだい)なため、今回説明した分散型エネルギー技術だけの発電では、とうてい間に合いません。しかし、これから先は従来の発電システムに加えて、この分散型エネルギー技術も利用されるでしょう。社会全体の電力供給は難しいですが、各家庭といった小さな規模においては、分散型エネルギー技術を用いて発電するという光景(こうけい)が、これから近い未来において、当たり前になるかもしれませんね。
分散型エネルギー技術の代表的(だいひょうてき)なものに太陽光発電があげられます。太陽光発電とは、半導体(はんどうだい)と呼ばれる物質からつくられた太陽電池です。太陽の光を浴びることで電気を生み出します。最近では外を歩いていると、屋根(やね)に太陽光発電システムを設置(せっち)した家をみかけることが多くなった気がします。有がいな排出ガスがでないためクリーン・エネルギーとして注目を集めています。
日本でも、太陽電池の費用を安価(あんか)にし、より効率(こうりつ)よく電力が生産できるように研究開発(けんきゅうかいはつ)が続(つづ)けられています。現在、世界の太陽電池による電力生産量が1年間で390メガワットなのですが、その半分以上が日本による生産なのです。世界1位の生産量であり、ちょっと誇らしげな気分になりそうですね。