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植物(しょくぶつ)は、水・二酸化炭素(にさんかたんそ)・太陽の光エネルギーから酸素(さんそ)と栄養分(えいようぶん)を生産(せいさん)します。これは光合成(こうごうせい)という植物の働(はたら)きです。人間などの動物(どうぶつ)は、植物(しょくぶつ)を摂取(せっしゅ)することで、必要な栄養分と酸素を体に取り入れています。
このように植物や動物の体内には、もともと太陽の光エネルギーであったエネルギーを、姿(すがた)を変(か)えて貯蓄(ちょちく)されていきます。
植物などの生物がうみだす有機物(ゆうきぶつ)から生産された資源(しげん)のことを「バイオマス」と呼びます。バイオマスには、薪(たきぎ)・家畜(かちく)の排泄物(はいせつぶつ)など、いろいろなものがあります。そして、これらを活用(かつよう)し得(え)られるエネルギーをバイオマスエネルギーと呼びます。バイオマスエネルギーは、自然界(しぜんかい)のサイクルのなかで何度(なんど)も使うことのできる「循環型(じゅんかんがた)エネルギー」です。元のエネルギーが形を変えて、さまざまな生物を行き渡(わた)り、また元のエネルギーに戻(もど)ることを指(さ)します。これは、石炭(せきたん)や石油(せきゆ)などを代表(だいひょう)する化石燃料(かせきねんりょう)のように一度使用したらなくなるものでもなく、また、限(かぎ)られた資源(しげん)でないため将来(しょうらい)を期待(きたい)されている新しいエネルギーなのです。
バイオマスエネルギーを資源として活用する方法は、さまざまなものがあります。
薪や藁(わら)などのほかに、紙を製造(せいぞう)するときに排出(はいしゅつ)される黒液(こくえき)という廃液(はいえき)を燃料(ねんりょう)として利用したり、家畜(かちく)の排泄物や生ごみなどを発酵(はっこう)すると出てくるメタンガスを、燃料として活用したりするなど、いつもでしたらゴミとして捨(す)ててしまう廃棄物をエネルギーとして再利用することができます。
また、ゴミとして捨てられてしまうものを利用するだけではなく、成長(せいちょう)著(いちじる)しい植物をエネルギー資源として利用することを目的として育てていくと言うことも考えられます。
バイオマスエネルギーは上手に活用すれば、大気に含まれている二酸化炭素(にさんかたんそ)の濃度(のうど)を上げるようなことはありません。植物を燃料として燃焼(ねんしょう)した場合、そのときに二酸化炭素がでますが、これは、もとは大気に含まれていた分の二酸化炭素です。植物は二酸化炭素を吸収(きゅうしゅう)しますので、その分が元に戻ったと言うことになります。したがって、大気の二酸化炭素が余分(よぶん)に増(ふ)えると言うことにはなりません。燃焼時(ねんしょうじ)に排出された二酸化炭素は、成長中の植物に吸収されるでしょう。このようにバイオマスエネルギーは消費(しょうひ)と育成(いくせい)の調整(ちょうせい)がうまく保持(ほじ)されているのでしたら、大気に含まれている二酸化炭素濃度(のうど)を上げることのないエネルギーといえます。
いま、アメリカ、ヨーロッパや日本のような先進国(せんしんこく)では、バイオマスエネルギーの消費(しょうひ)している量は、使われている全てのエネルギー量に対してほんの数%しかなりませんが、発展途上国(てんてんとじょうこく)をみると、薪(たきぎ)を利用して火をおこしている国も多く、世界中の統計(とうけい)をみると一次エネルギーの消費量の約一割(わり)がバイオマスエネルギーによるものとされています。
バイオマスエネルギーは、大気に含まれている二酸化炭素の濃度を上げないため、二酸化炭素の増加(ぞうか)が一つの原因(げんいん)としてあげられる地球温暖化問題の対策(たいさく)に使えるということで注目(ちゅうもく)されています。現在、日本でも紙の製造時(せいぞうじ)に排出(はいしゅつ)される黒液(こくえき)を燃料として再利用を行ったり、サトウキビのしぼりかすをバイオマス燃料として再利用したりなどの取り組みが行われています。これらの取り組みにより日本で消費される一次エネルギーの消費量の約一%弱(じゃく)をバイオマスエネルギーが担(にな)っています。日本政府(せいふ)は、今後もバイオマスエネルギーの供給(きょうきゅう)を増加していこうという目標(もくひょう)をたてています。