トップページ >> エネルギーが使(つか)われているシーン >> エネルギーのうつりかわり(2)
機関車(きかんしゃ)や暖房(だんぼう)に使われていた蒸気機関は、数年後に、車の動力(どうりょく)としても利用されはじめました。ただ、蒸気を動力とした車は燃料が思っていた以上にかかっていまい、また、運転(うんてん)が難(むずか)しいものでした。
そこで、燃料(ねんりょう)を効率(こうりつ)よく使うことができるように開発(かいはつ)されたのが内燃機関です。内燃機関が動力となったことで運転もずっと楽(らく)になりました。この内燃機関とは、機関の中で燃料を燃焼(ねんしょう)し、そこで発生(はっせい)した燃焼ガスを利用して、動力を生み出すというからくりです。
今、ぼくたちの社会にある自動車、ロケットやジェット機などで使われているエンジンは、全部、内燃機関が取り入れられています。そして、この内燃機関を動かす燃料としてあらわれたものが「石油」です。内燃機関が普及(ふきゅう)するに従(したが)い、石油の需要(じゅよう)が大きく高まりました。
内燃機関が発明(はつめい)されてから石油が使われはじめた同じ時期(じき)に、もうひとつの新しいエネルギーが台頭(たいとう)しました。それが「電気」です。電気が使われるようになり、人類で初めて「ものを燃焼させる」以外の方法でエネルギーを多く使用できるようになりました。いま、ぼくたちの暮らし(くらし)に必要不可欠(ひつようふかけつ)なエネルギーのうちの大部分は、電気によるものです。
電気は、蒸気のように動力のみに限(かぎ)らず、いろいろなところで利用できる利便性(りべんせい)を備(そな)えています。電気製品(せいひん)、コンピューターや電話など、生活に必要なもののほとんどは、電気がないと使い物になりません。
これら「石油」と「電気」という2種類の新エネルギーが登場(とうじょう)したおかげで、社会は機械化(きかいか)が進み、人々の働(はたら)く時間が大幅(おおはば)に短縮(たんしゅく)されました。工場(こうじょう)、企業(きぎょう)が都会に進出(しんしゅつ)し、生活に便利なアイテムが多種類(たしゅるい)つくられるなど、ぼくたちの暮らしは大きく様変わり(さまがわり)しました。
また、新エネルギーとして「原子力(げんしりょく)」があらわれました。これは、戦そうで使用された「原子ばくだん」の開発(かいはつ)から生じたエネルギーなのですが、電力を生み出すために利用したものが原子力発電(げんしりょくはつでん)です。原子力発電は1970年代ころから本格的(ほんかくてき)に取り組まれるようになりました。火力や水力発電とは異(こと)なり、原子力による発電は完全(かんぜん)に人の手によってつくりだされるエネルギーなのです。
人類が生まれた時代~近代までのエネルギーの移り変わりを簡単(かんたん)に紹介(しょうかい)してきました。このように時代と共(とも)に新しいエネルギーが登場(とうじょう)し、生活や暮らしが便利(べんり)で豊か(ゆたか)になっていく様子(ようす)がおわかりいただけたでしょうか。しかし、新エネルギーの誕生(たんじょう)と共に生まれた新たな問題が、公害などによる地球環境の問題です。工場から排出(はいしゅつ)される有がい物質などにより、ぼくたちの健康(けんこう)に悪い影響(えいきょう)を及(およ)ぼすようになりました。
1952年にはイギリスの首都(しゅと)ロンドンで、工場から排出される煙(けむり)による有がいなスモッグが原因(げんいん)で、4,000人もなくなったという大きな事件(じけん)が(ロンドンスモッグ事件)が起きました。また、日本でも1960年代に、三重県(みえけん)四日市市(よっかいちし)で、石油コンビナートから排出された有がい物質により、付近(ふきん)の住人にぜん息(ぜんそく)や気管支炎(きかんしえん)などの症状(しょうじょう)がみられました(四日市ぜん息(よっかいちぜんそく))。同じような被がいは世界中で起こってしまい、「公害」と呼ばれるようになりました。公害は大きな問題として現在も世界中でさまざまな取り組みや対策がとられています。
こうした世界の取り組みにより、現在、公害は減少(げんしょう)してきていますが、エネルギーがこれからもかわらずに大量消費(たいりょうしょうひ)されていくと、二酸化炭素(にさんかたんそ)の排出(はいしゅつ)も多くなり、地球温暖化の原因になったり、窒素酸化物(ちっそさんかぶつ)などの有がい物質(ぶっしつ)による影響(えいきょう)で大気汚染(たいきおせん)が発生(はっせい)し、酸性雨(さんせいう)が各地で降(ふ)ったりなど、さまざまな影響(えいきょう)も多くなります。
これまでの公害問題は、「被がいを受けるもの」と「被がいを与るたもの」が明確化(めいかくか)していました。しかし、公害問題はエネルギーを使う人類全部が「被がいを与えるもの」であり、地球上に生息(せいそく)する人類を含(ふく)めたすべてのものが「被がいを受けるもの」となります。人類は「被がいを与えるもの」であり「被がいを受けるもの」でもあるのです。