アメリカでよく発生(はっせい)する異常気象(いじょうきしょう)のひとつにトルネード(竜巻※たつまき)がありますが、この年の春にいままで観測(かんそく)したことのない最大(さいだい)のトルネードが発生(はっせい)しました。さらにこれだけではなく、100年に一度と言われたほどの異常(いじょう)な干ばつ(雨が降らず作物が育(そだ)たない)も起こったのです。しかし、異常気象はこれでおさまらず、アメリカにある国立公園(こくりつこうえん)の中でもっとも大きいと言われている「イエローストーン国立公園」では広範囲(こうはんい)にわたり森林火災(しんりんかさい)が発生しました。この大火災(だいかさい)の原因(げんいん)は、干ばつにより草木が乾(かわ)いてしまい、そこに雷(かみなり)が落(お)ちたことにより、火が発生(はっせい)。約(やく)40万ヘクタール(東京の面積(めんせき)の2倍)にも及(およ)ぶ大火災になりました。
当時(とうじ)ヨーロッパをおそった低気圧(ていきあつ)による異じょう気象でたいへんな被(ひ)がいとなりました。この低気圧の名は「ダリア」と呼(よ)ばれています。ダリアがヨーロッパに現(あらわ)れてから90日間(にちかん)、同じように強い低気圧が現れ、大きな被がいとなりました。
50年に1回あるかどうかというほどの寒い夏でした。冷夏(れいか)と呼ばれ異じょう気象のひとつでありますが、この年の日本の夏はほんとうに寒(さむ)かったと思います。しかも台風(たいふう)も多く、1年で7回も来ました。冷夏と台風、さらに雨の降(ふ)り続(つづ)ける日々(ひび)であったため、当然(とうぜん)、農作物(のうさくもつ)は育(そだ)たず、農家(のうか)はたいへんな思いをしました。
約180日間という長期(ちょうき)の間、雨が殆(ほとん)ど降らない干ばつの異じょう気象が発生しました。この干ばつのおかげで、森林は乾燥(かんそう)し、そして火災が発生。熱帯地方(ねったいちほう)自慢(じまん)の森林は焼(や)け続けました。その期間(きかん)、なんと60日間。火はとどまることなく、海を飛(と)び越(こ)えて実(じつ)に約1,000km(キロメートル)も広がりました。
世界(せかい)を代表(だいひょう)する珊瑚礁(さんごしょう)の広がるインド洋モルディブ海では、異じょう気象のあおりで、海の水の温度が急激(きゅうげき)に上昇(じょうしょう)しました。その結果(けっか)、珊瑚(さんご)が温度(おんど)に適応(てきおう)できず、真っ白に白化(はくか)してしまい、多くの珊瑚(さんご)の命(いのち)を終(お)わらせてしまいました。この海水温度(かいすいおんど)の急上昇(きゅうじょうしょう)は他(ほか)の地域(ちいき)でもみられ、北極(ほっきょく)の海に張(は)っていた氷(こおり)の厚(あつ)さが観測史上(かんそくしじょう)もっとも薄(うす)くなったという記録(きろく)が出ました。
アメリカは土地が広大(こうだい)です。この年では各地(かくち)でそれぞれで異なった異じょう気象が見られました。東側(ひがしがわ)では1年でほとんど雨の降らない干ばつが発生(はっせい)したのに対し、南側(みなみがわ)では雨が降り続け、コーヒーの産地(さんち)で有名なコロンビアでは、この集中的(しゅうちゅうてき)な降雨(こうう)により、多数(たすう)の尊(とうとい)い命(いのち)を失(うしな)いました。一方(いっぽう)、同じ年のヨーロッパでは、アルプス山脈(さんみゃく)に例年(れいねん)にはないほどの雪が大量(たいりょう)に降り、春に近づくにつれ暖(あたた)かくなり雪崩(なだれ)が頻繁(ひんぱん)に起こり、さらに雪が溶(と)けることで、その雪どけ水が洪水(こうずい)を引き起こすほどでした。
この年は、アジア全般(ぜんぱん)で雨(あめ)の多い年になりました。とくに東南(とうなん)アジア、中国の南側では大雨によりたいへん大きな被がいが発生しました。アフリカでも同様(どうよう)に大量の雨が降ったほか、台風が何度も上陸(じょうりく)したことで被がいが拡大(かくだい)しました。
この年の夏、記録的(きろくてき)な猛暑(もうしょ)という異じょう気象となった平成15年のヨーロッパ。フランスでは平均気温(へいきんきおん)が40℃となり、この暑(あつ)さのため、抵抗力(ていこうりょく)の弱い高齢者(こうれいしゃ)を多く含む多数の尊(とうと)い命が失(うしな)われました。インドではさらに気温が高く、平均が45℃前後(ぜんご)となりました。しかし、日本では猛暑ではなく、冷夏(れいか)となり農作物(のうさくもつ)がまったく育たず、野菜(やさい)が高騰(こうとう)しました。