ヒートアイランド現象が大都市で見られる原因(げんいん)について、実はエアコンだけではありません。工業化(こうぎょうか)、都市計画化(としけいかくか)が進んだおかげで、街(まち)には緑(みどり)が少なくなりアスファルトといったコンクリートに埋(う)め尽(つ)くされています。コンクリートは太陽熱(たいようねつ)を大量(あちりょう)に含(ふく)み、そして放出(ほうしゅつ)し、大気を熱(ねっ)します。植物(しょくぶつ)の呼吸(こきゅう)で得(え)られるはずの水分も期待(きたい)できないため、乾燥(かんそう)した空気となり、気温はなかなか下がりません。このように、工業化の進んだ大都市では、周辺の地域(ちいき)に比(くら)べ熱が溜(た)まりやすい環境(かんきょう)となっているのです。そのため、周辺地域(しゅうへんちいき)に比べ気温が異常(いじょう)に高いことから、大都市で発生する気温上昇現象を「ヒートアイランド現象」と呼びます。

「逆転層」と呼ばれる「層(そう)」があります。これは、ビルディングの密集(みっしゅう)により、風の通(とお)りが悪(わる)くなり、上空(じょうくう)へ行くにつれて下がるはずの気温(きおん)が、ある地点(ちてん)に行くと逆転(ぎゃくてん)し、「層」のようになります。発生(はっせい)したこの「層」がちょうど「フタ」の役割(やくわり)をしてしまい、熱気(ねっき)を逃(のが)さず、下の方へ溜(た)めてしまいます。このような「層」ができてしまうことを「逆転層」と呼び、大都市でみられる現象です。

20世紀において、日本全体の平均気温の上昇具合(じょうしょうぐあい)を見てみますと、1年間の平均気温が約1℃の上昇となりましたが、東京のみで見てみますと、都心(としん)において1年間の平均気温(へいきんきおん)が3℃も上昇しました。これは、近代化(きんだいか)の進み、人工密集(じんこうみっしゅう)の加速(かそく)により、ヒートアイランド現象が顕著(けんちょ(※確かに、確実にという意味))に表(あらわ)れているといえるのではないでしょうか。

地球温暖化(ちきゅうおんだんか)により、過去(かこ)100年において地球全体(ちきゅうぜんたい)の平均気温(へいきんきおん)の上昇が約0.6℃ですが、東京や大阪といった大都市においては約3℃の上昇という、これは地球全体の気温上昇の実に5倍もの数値(すうち)を示(しめ)しております。

ヒートアイランド現象は、気温上昇(きおんじょうしょう)による熱波(ねっぱ)の影響(えいきょう)だけではありません。大都市では突然(とつぜん)、ものすごい量(りょう)の雨が降(ふ)り出すことがあります。この集中豪雨(しゅうちゅうごうう)で、地下鉄(ちかてつ)に雨水(あまみず)が浸入(しんにゅう)し、水につかってしまうことが1999年の東京渋谷駅(とうきょうしぶやえき)で発生(はっせい)しました。ヒートアイランド現象は、雨雲(あまぐも)を発生させやすいため、このような短時間(たんじかん)に集中的な雨が降ってしまいます。

今回、東京や大阪を例にヒートアイランド現象について説明(せつめい)しましたが、外国でも同じようにヒートアイランド現象は社会問題(しゃかいもんだい)となっています。アメリカやヨーロッパなど、近代化(きんだいか)の進んだ都市群(としぐん)では私たち日本以上に深刻(しんこく)な問題(もんだい)として取(と)り組(く)みされております。