現在(げんざい)、世界の至(いた)る所(ところ)で「砂漠化」問題(もんだい)が深刻(しんこく)となっています。砂漠化の起(お)きる主(おも)だった地域(ちいき)とは、雨が少なく乾燥(かんそう)したところで、人口が急激(きゅうげき)に増加(ぞうか)している発展途上国(はってんとじょうこく)です。
雨が少量(しょうりょう)であるため、草木などの植物(しょくぶつ)がなかなか育(そだ)たない地域を砂漠(さばく)と呼(よ)びますが、砂漠化とは、普通(ふつう)であったら植物が育つ地域が、いろいろな要因(よういん)により、植物の育つ環境(かんきょう)が損(そこ)なわれるほど、土が弱体(じゃくたい)することをいいます。
もとから植物のあまりいないこのような地域では、僅(わず)かな草や低木(ていぼく)を、薪(まき)あるいは炭(すみ)などにし、燃料(ねんりょう)にして生活(せいかつ)をしてきました。また、山羊(やぎ)などの家畜(かちく)の放牧(ほうぼく)で生計(せいけい)を立てている地域もありました。しかし、人口が増えることに従い、より多くの薪や炭が必要となり、人家(じんか)の周りにあった草木などの植物がなくなってしまったり、放牧(ほうぼく)する山羊などの家畜の数を増加(ぞうか)したために、生えかけの芽(め)を食べたり、草が食べ尽くされたりしました。
このようにして、草木の植物がはえていない、いわゆる「裸(はだか)」の土地が、風または雨などの影響で、地表にある栄養分(えいようぶん)を含(ふく)んだ土が、遠(とお)くへ(と)飛ばされてしまったり、流(なが)されたりして、結果(けっか)、草木の生えない荒れ地(あれち)に変貌(へんぼう)してしまいます。
今、地球上の陸(りく)の5分の1以上(いじょう)である約3,600万平方(へいほう)キロメートルの土地が砂漠化しております。また、毎年、約7万平方キロメートルずつ砂漠が広がっているのです。
特に砂漠化が大きな問題となっているのは、アフリカ、中国西部(ちゅうごくせいぶ)やロシア南部(なんぶ)などですが、最近(さいきん)では、南アメリカやオーストラリアなどでも砂漠化が進(すす)んできております。今、地球上には約60億人(おくにん)の人々が生活しておりますが、約9億人の人々が砂漠化によるなんらかの影響(えいきょう)を受けていると言われています。
北アメリカ、南アメリカやオーストラリアなど、大きな農場(のうじょう)の広がるこれらの地域においても、土地が荒(あ)れてきて、砂漠化の兆候(ちょうこう)が見られています。これは、砂漠化の原因(げんいん)としてあげられる「土壌流ぼう」によるものです。
土壌流ぼうとは、地表(ちひょう)にある養分(ようぶん)を多く含(ふく)んだ土を、雨や風が削(けず)り取ってしまうことで、農作物(のうさくもつ)の育(そだ)たない土地になってしまうことです。
畑の土地の地表は、森林地域(しんりんちいき)にある地表とは異(こと)なり、かれ葉や落ち葉(おちば)などがあるわけではありません。そのため、雨が降ったとき、水が土壌(どじょう)にうまく染(し)みこまずに土が雨水によって流(なが)されてしまいます。また、風が強いときには養分(ようぶん)を含(ふく)んだ土が遠(とお)くへ飛(と)ばされてしまいます。土壌流ぼうはとくに、傾(かたむ)いている農地(のうち)で起きやすく、中国や日本の沖縄(おきなわ)などでも確認(かくにん)することができます。
人口が増えていくに従(したぎ)い、ちょっとでも食料(しょくりょう)をつくろうとして山の斜面(しゃめん)にまで開拓(かいたく)を進めることもありますが、逆に土壌流ぼうによって被がいが大きくなったりします。
雨が少量の地域では畑用(はたけよう)の農地(のうち)をつくるために、河川(かせん)から水を引っ張(ぱ)ってくることができるよう、用水路を別(べつ)につくる必要(ひつよう)があります。河川の水不足や用水路が機能(きのう)しないことにより、砂漠化が発生(はっせい)している地域も出てきています。
このような地域では、土の中に蓄(たくわ)えられていた水分が熱(ねつ)で蒸発(じょうはつ)していくので、用水路がないと乾燥(かんそう)を妨(さまた)げることができません。しかし、もとから雨が少量(しょうりょう)の地域であるために、畑が増加すると水不足になってしまうのです。また、用水路は土で製作(せいさく)したりするので水漏(みずも)れが激(はげ)しかったり、コンクリートで製作したものでも管理(かんり)が行き届(とど)かなかったことで土砂(どしゃ)が堆積(たいせき)して水が詰(つ)まったりなどして、畑に必要な水が流れてこずに、土の乾燥(かんそう)をとめることができません。このとき、地表の水気(みずけ)が蒸発により失われてしまうと、土の深いところから水を吸(す)い上げようとします。
自然(しぜん)には「塩化(えんか)ナトリウム」と「塩化カリウム」という塩類(えんるい)の物質(ぶっしつ)があります。塩化ナトリウムとは、ぼくたちが口にする塩(しお)と一緒(いっしょ)で、水に溶(と)けやすいという性質(せいしつ)を持ちます。用水路で運(はこ)ばれた水や、土深いところから吸い上げられた水に、これらの塩類物質が含(ふく)まれていると、水分が蒸発(じょうはつ)した後(あと)には塩類のみが残ってしまいます。これが繰(く)り返されると地表には塩類が堆積していきます。これが砂漠化の原因のひとつとしてあげられる「塩類集積(えんるいしゅうせき)」と呼ばれるものです。
塩類集積が発生すると、地面に塩を大量(たいりょう)に振(ふ)りかけたことと同様(どうよう)の状態(じょうたい)といえます。植物はかれてしまいますし、畑として使うことのできない荒れ地となってしまいます。そして砂漠化となります。中国西部やロシア南部では、このように砂漠化した農地を手放(てばな)し、対策(たいさく)を施(ほどこ)すことなく放(ほう)っておいていますので、問題視(もんだいし)されています。