畑で農作物(のうさくもく)をつくるときに使われる農薬(のうやく)または化学肥料(かがくひりょう)などは、効率(こうりつ)の良い近代農業(きんだいのうぎょう)の手法(しゅほう)ですが、土や地下水を汚染(おせん)し、川を汚(よご)す原因(げんいん)となります。そのため、農薬を使用(しよう)しない農業をしたり、人のつくり出した化学肥料を使うのではなく、有機肥料(ゆうきひりょう)に変更(へんこう)したりするなどの対策(たいさく)を各地の農家(のうか)で行っております。
農薬を使わなかったり、有機肥料での農業は、作業(さぎょう)の手間(てま)がかかる上に、お金がかかりますし、収穫(しゅうかく)できる量(りょう)も減(へ)ったりするなどの理由から、まだ実施(じっし)している農家が少ないという現状(げんじょう)です。
そのため、野菜(やさい)などを購入(こうにゅう)するぼくたちが、農薬を使っていない、または有機肥料のものを積極的(せっきょくてき)に買(か)うようにして、生産(さいさん)している農家に協力(きょうりょく)する必要(ひつよう)があります。無農薬や有機肥料による栽培(さいばい)にシフトし、これまで行われてきた農業を改(あらた)めていくことで、日本国内の水と土を守ることも可能(かのう)となるのです。
いま、ぼくたちが行っている排水(はいすい)の処理(しょり)では、川に汚れた物質(ぶっしつ)が流(なが)れてしまうことを完全(かんぜん)に防止(ぼうし)することができません。もっとも良い方法としては、汚染物質の少ないうちに水をきれいにする処理(しょり)を行うことです。家庭ごと、田んぼごとなど、1カ所ずつに下水処理(げすいしょり)を行うシステムを設置(せっち)することだと言われています。たしかに、この方法をとれば、川はいまよりずっときれいになるでしょう。しかし、そのためには莫大(ばくだい)な予算(よさん)と人手(ひとで)が必要となり、現実(げんじつ)では実現(じつげん) が困難(こんなん)であるといっても良いでしょう。
家庭ごとには困難を極(きわ)めますが、世帯(せたい)ごとに下水処理を行う浄化設備(じょうかせつび)の設置はできます。実は、農村(のうそん)といった家のあまりない地域(ちいき)では、すでに取り付けが行われているのです。
汚れをきれいにすることはとても大切ですが、元を正せば、汚れたものを出さないにつきるでしょう。料理(りょうり)・洗濯(せんたく)・洗い物(あらいもの)・お風呂(ふろ)などからでる生活排水(せいかつはいすい)が川の水を汚す最大(さいだい)の原因(げんいん)となっています。ぼくたちが日頃(ひごろ)からちょっと気をつけることで、少しでも汚れの少ない生活排水にすることができます。
たとえば、料理するときにでる野菜のくず・天ぷらのかす・使った油(あぶら)などを流さないようにしたり、洗剤(せんざい)や石けんをできるだけ使用しないようにしたりなどです。
日本には青森県(あおもりけん)と秋田県(あきたけん)の間にある白神山地(しらかみさんち※世界いさんにとうろくされています)にあるブナ林(りん)などの天然林(てんねんりん)と、木材(もくざい)として使用されるスギやヒノキなどを人の手で植(う)えて作った人工林(じんこうりん)の2種類(しゅるい)で、森が形成(けいせい)されています。これらの種類は、守るための取り組みがそれぞれ異(こと)なってきます。一言で言うと、天然林はそのままの形で、人工林はなるべく人の管理(かんり)が必要(ひつよう)となります。
ブナ林などの天然林が劣化(れっか)してしまう大きな原因には、これまでなかった道路(どうろ)の建設(けんせつ)、ゴルフ場の開拓(かいたく)やホテルの建設など、リゾート開発(かいはつ)による影響(えいきょう)が大きいのです。
自然の中に人工物(じんこうぶつ)があらわれると、そこに住む動植物(どうしょくぶつ)にとって悪影響(あくえいきょう)となります。生態系(せいたいけい)のバランスが崩(くず)れてしまうため天然林が荒(あ)れてしまいます。
天然林は国内においても大変貴重(たいへんきちょう)なものです。そのため、白神山地のブナ林をはじめとした全国(ぜんこく)の国有林(こくゆうりん)(天然林)の27カ所(平成15年)について法律(ほうりつ)により守られています。また、川の上流(じょうりゅう)に位置(いち)する森林(※水源林(すいげんりん)と呼びます)の保護(ほご)や、川の下流域で生活している人たちがお金を出し合い、上流の森林を守る「水源林基金(すいげんりんききん)」なるもので保護(ほご)したりなど、各市町村(かくしちょうそん)の自治体(じちたい)で森を守る活動(かつどう)が行われています。
スギやヒノキなどの人工林(じんこうりん)については、そのまま放(ほう)っておいたら荒(あ)れる一方(いっぽう)ですので、人の手で管理(かんり)をしてあげなくてはいけません。十数年(じゅうすうねん)に一回は、育ちすぎるのを防(ふせ)ぐために、木を切り、隙間(すきま)を与(あた)えないといけません(※間伐(かんばつ)と呼びます)。この間伐を行わないと、地表(ちひょう)に生(は)える草花(くさはな)などの植物(しょくぶつ)に日光(にっこう)が当たらずにかれてしまいます。すると、土がむき出しになってしまうため、雨が降ったとき土が流されてしまい、川が汚れてしまったり、土の養分(ようぶん)が流されて減少(げんしょう)したり、酷(ひど)いときは土砂(どしゃ)崩(くず)れも起こしてしまうこともあります。結果、森が荒(あ)れてしまうのです。
里山(さとやま)(※人の住む地域(ちいき)に隣接(りんせつ)した、小山(おやま)や林や沼(ぬま)などの自然環境(しぜんかんきょう)のこと)も人工林である以上(いじょう)、一定(いってい)の周期(しゅうき)で間伐を行わなくてはいけません。近くの自然を保護(ほご)しようと、木を切ることをためらってしまうと、日光(にっこう)を遮(さえぎ)られ、草花などの植物がかれてしまい、生態系(せいたいけい)を崩す要因(よういん)となってしまいます。明るい林を維持(いじ)するためにも、人工林は人の手による管理(かんり)を怠(おこた)らないようにすることが大切なのです。