地球の周囲(しゅうい)を覆(おお)っている大気の層は、地面に近いところから約10キロメートル~17キロメートルの高さまでの対流圏(たいりゅうけん)、その上にある成層圏(せいそうけん)、高さ50キローメートル~80キローメートルほどまでの中間圏(ちゅうかんけん)、高さ80キロメートル~600キロメートルまでの熱圏(ねっけん)の4つの大気層があります。
対流圏の上にある成層圏の中の上空20キロメートル~30キロメートルを中心に、オゾン層があります。オゾン層とは、オゾンという物質が層を生成(せいせい)し、地球を覆っているためオゾン層という名がつきました。オゾン層の役割(やくわり)は、地球に住んでいる人間、動物(どうぶつ)、植物(しょくぶつ)などを太陽の有がいな紫外線から守ります。紫外線を吸収(きゅうしゅう)する働(はたら)きがオゾン層にあります。人間の場合、太陽からの紫外線を浴(あ)びすぎてしまうと、皮膚(ひふ)がんといった症状(しょうじょう)が発生することもあります。
例(れい)をあげると、メキシコのメキシコシティ、ネパールのカトマンズなどの都市では、車の排ガスが原因で大気汚染が大変な問題となっています。メキシコシティやカトマンズで大気汚染が深刻化している原因に、急激(きゅうげき)な都市化も一因(いちいん)となっていますが、地理的(ちりてき)な要素(ようそ)もからんできます。
オゾンは紫外線を吸収しますが、どのような物質(ぶっしつ)でつくられているのでしょうか。紫外線には物を分解(ぶんかい)する働(はたら)きがあります。したがって、紫外線が強く降(ふ)り注(そそ)ぐ上空(じょうくう)では、酸素(さんそ)がどんどん分解されているのです。この分解した酸素がオゾンになります。もとが酸素であるといってもオゾンは人の体にとっては有がいな物質であるため吸い込むことはできません。しかし、上空では地球上に降り注ぐ太陽からの紫外線を吸収し、ぼくたちを守ってくれているのです。
日本の南極観測隊(なんきょくかんそくたい)では、南極(なんきょく)におけるさまざまな観測(かんそく)を行っています。南極の地上の気象(きしょう)や南極上空の気象の観測などの他に、オゾン層の観測も行っています。この南極観測隊が拠点(きょてん)として使用(しよう)している基地(きち)のひとつに昭和基地(しょうわきち)があります。
昭和57年に南極観測隊が昭和基地の上空にあるオゾンの量(りょう)について観測をしてみたところ、オゾンの量が大変(たいへん)少なくなっていることを感(かん)じました。想像(そうぞう)していた以上(いじょう)に少なかったため、観測した人のミスか機械(きかい)の故障(こしょう)ではと思ったほどでした。
そのあと、何度も観測しデータをとって調査(ちょうさ)した結果(けっか)、機械の故障でも、人のミスでもなく、オゾン層がなんらかの原因で少なくなっていることがわかりました。もちろん、この観測結果は、早急(そうきゅう)に世界各地(せかいかくち)へと報告(ほうこく)しました。
南極上空のオゾンホールについて
人工衛星(じんこうえいせい)で取得(しゅとく)したデータをもとにつくられたといわれる南極上空にあるオゾン分布量(ぶんぷりょう)をみてみました。3枚(まい)のデータはそれぞれ昭和54年、平成12年、平成15年のものです。昭和54年のデータをみてみますと、オゾン層が薄(うす)くなっている部分を示すところが少ないのに対し、平成12年と平成15年のデータをみてみますと、オゾンがかなり少なくなっていることを示すところが目立っています。
オゾンが薄くなっているところは、オゾン層に穴があいているようにみえるために、オゾンホールと呼ばれています。ただ、本当にオゾン層に穴があいているわけではありません。オゾン層のオゾンの量が通常(つうじょう)よりかなり少なくなっている現象(げんしょう)ということです。
オゾンホールは南極の上空で見つかりましたが、南極のような大がかりな規模(きぼ)でなくてもオゾンホールの現象は世界各地の上空で兆候(ちょうこう)が見られています。