オゾンホールの現象(げんしょう)が南極上空(なんきょくじょうくう)でみられてから研究(けんきゅう)がおこなわれるようになりました。そしてどうしてオゾンホールができるかについてその仕組みを知ることができました。オゾン層が破かいする原因(げんいん)は、人間がつくったフロンという物質(ぶっしつ)だったのです。フロンとは、自然(しぜん)には存在(そんざい)しない、人工的(じんこうてき)な物質(ぶっしつ)です。フロンが作られた目的(もくてき)には、エアコンや冷蔵庫(れいぞうこ)を冷却(れいきゃく)するための物質として使用されたり、電子機器(でんしきき)を洗浄(せんじょう)する洗浄剤(せんじょうざい)や、スプレーのガスに使われています。
フロンの性質(せいしつ)はきわめて壊(こわ)れにくいという特徴(とくちょう)があり、大気内(たいきない)に含(ふく)まれると、そのまま高さ50キロメートルまで壊(こわ)れずに上っていきます。しかし、50キロメートルまでいくと紫外線(しがいせん)が強いために、壊れにくい性質を持つフロントいえども分解(ぶんかい)されてしまいます。すると他の物質と結合(けつごう)するのですが、結合した物質というものが化学反応(かがくはんのう)を起こしやすい塩素原子(えんそげんし)となってしまいます。
この塩素原子が空気と一緒(いっしょ)に高さ20キロメートルぐらいまで下がってきます。そしてオゾン層を破かいするのです。ただ、オゾンホールは365日中発生(はっせい)するわけではありません。オゾン層では通常(つうじょう)はフロンからつくられた塩素原子は他物質(たぶっしつ)と反応(はんのう)しますので、オゾンとは化学反応を起こしづらいガスとなります。しかし、冬の南極の上空に至(いた)っては、気温が非常(ひじょう)に低いために雲(くも)ができてしまい、この雲のおかげで塩素原子が2個結合した塩素分子(えんそぶんし)が冬季期間(とうききかん)に大量(たいりょう)に生成(せいせい)されます。そして、春になり紫外線が加わると、それら塩素分子が分解し、大量の塩素原子に戻り、オゾンを破かいし始めるのです。結果(けっか)、オゾンホールができてしまいます。
生物(せいぶつ)の細胞(さいぼう)にはDNA(でぃー・えぬ・えー)という物質が含(ふく)まれていますが、このDNAにはその生物の体の形状(けいじょう)や性質(せいしつ)を決定(けってい)する遺伝情報(いでんじょうほう)があります。太陽光(たいようこう)から降(ふ)り注(そそ)ぐ紫外線にはA波(えー・は)・B波(びー・は)・C波(しー・は)の3つの種類(しゅるい)がありますが、なかでもB波・C波はぼくたちのDNAを傷(きず)つけるという有がいな物質です。オゾン層は、紫外線の大部分(だいぶぶん)を吸収(きゅうしゅう)するため、全生物(ぜんせいぶつ)に有がいとなるB波・C波などから守(まも)ってくれます。したがって、オゾン層のオゾンの量が少なくなると言うことは、紫外線を吸収する力が衰(おとろ)えてしまうと言うことになりますので、ぼくたちの体に悪影響(あくえいきょう)を及(およ)ぼすB波・C波などが地上に降り注ぐ形になります。
人間への影響としてあげられるのは、皮膚(ひふ)がんや白内障(はくないしょう)です。皮膚がんは主に紫外線が原因とされています。
白内障は、目のなかにある本来(ほんらい)は透明(とうめい)であるはずの水晶体(すいしょうた)が白く濁(にご)ってしまう症状(しょうじょう)です。紫外線によって水晶体が傷つけられるためにあらわれる症状です。
また、有がいな紫外線にDNAが傷つけられると病気に抵抗(ていこうす)する力も弱体化(じゃくたいか)します。免疫力(めんえきりょく)の低下(ていか)にもつながってしまいます。
人間だけではなく、植物も有がいな紫外線により、細胞に傷を負ったり、光合成(こうごうせい)がうまくできなくなったりするので成長(せいちょう)がストップすることもあります。もちろん野菜(やさい)といった農作物(のうさくもつ)も影響を受けます。また、水中に生息(せいそく)するプランクトンといった微生物(びせいぶつ)においても悪影響(あくえいきょう)を受けます。するとプランクトンを餌(えさ)としていた魚が減ってしまいます。魚が減ると、魚を餌にしていた哺乳類(ほにゅうるい)や鳥類(ちょうるい)なども減少(げんしょう)してしまうなど、生態系(せいたいけい)においてさまざまな影響を及ぼすことになります。